どうも、試奏できない楽器はネットサーフィンとYouTubeで徹底的にリサーチしてから買うおじさんです。
ネックの合う合わないとか実際触ってみないとわからないことも多いんですが、案外スペックとYouTubeの試し弾き音源だけでわかることって結構あると思います。
が、そもそもネットに情報が少ない楽器も多く、僕が持ってるGrecoのレスポールもその一つかなと思ったので、こうしてインターネットに情報を残しておこうと思い、記事を書いてみることにしました。
手に入れた経緯
実はこのギター、高校生でギターを始めたときに最初に買ったギターです。お値段なんと5万円。
ほぼ傷なしのデッドストック品と考えると破格…完全にご好意で、近所の釣具屋のおっちゃん(確か元プロギタリスト)から譲ってもらったギターです。
人生初楽器といえば、大抵は安物で、高い楽器を買ったら思い出として大事に倉庫に…というパターンが多いと思いますが、この楽器に関してはいまだに現役で、10年以上倉庫行きになったことがありません。もちろんGibsonのレスポールとは違う楽器ですが、亜流と馬鹿にするにはもったいないポテンシャルがある楽器です。
ジャパンヴィンテージとして、細かいスペックなどの情報は割とよく見かけるので、この記事ではプレイヤー視点でこの楽器を分析していきたいと思います。
スペック
型番:EG900 les paul model
製造:1979年
ボディ:2p maple top / 2p mahogany back
ネック:maple
指板:ハカランダ(Brazilian rosewood)
PU:多分Dimarzio PAF
塗装:ポリウレタン
ペグ:Grecoオリジナル
特徴
レスポールといえば本家Gibson、特に59年製が最高で、ほとんどのレスポールモデルは57〜59年製のオリジナルと比べられてしまう宿命にあるように感じます。が、本家のレスポールとは見ての通り全然スペックが違うこの楽器も、邪道として扱うにはあまりにもったいないポテンシャルがあるので、この楽器に特有の個性、強みを考えてみたいと思います。
国産
地震大国にもかかわらず、世界最古の木造建築である法隆寺がいまだに現役なくらい木材加工技術が世界レベルで強い日本。実はギターでもアメリカと2強で、かなり世界で強い分野の一つです。
とはいえ最初から最強だったわけではなく、1975年以前のモデルはおもちゃみたいな見た目で、お世辞にも質が良いとはいえません。が、1976年あたりを境に覚醒。
僕自身、1976年製のGrecoのストラト(多分SE800)を同じおっちゃんから譲ってもらいましたが、そっちも2021年現在、まだ現役です。
なんと言っても国産のギターの特徴は作りが正確なこと。ネックの接合部が隙間なくぴったり入る技術は、日本ほど正確にできる国はほとんどないと思います。
この技術のおかげで、日本の楽器は故障が少なく、ピッチも安定していて楽器としての性能が高いです。
また、弦が綺麗に鳴るのでモダンな音なる傾向があり、アメリカの高級メーカー(Sadowskyとか)もかなりガッチガチに作り込む傾向があります。
対照的なのがGibson(特にUSA)で、音は最高な反面、ネックの強度に問題があるという指摘もよく見かけます。
ただ、ギターはあまりかっちり作りすぎると遊びがなくなってしまい、なんというか余裕のない、窮屈な鳴り方になるというデメリットもあります。特に最近の国産の楽器は、どのメーカーも同じ音がするので退屈なのは否めない、という印象です。安いモデルでも作りが精巧なので、コスパは良いんですけどね。
ではこのギターはというと、日本のギター制作における木工技術の過渡期だからなのか、現在のギターほどかっちり作られているわけではないようで、最近の国産のギターに比べると鳴り方に少しゆとりがあるような気がします。
また、ハードウェアの質があまり良くないためか、結果的に枯れた音がします。昔はこの中途半端さが嫌でよく部品を交換しようか迷ったものですが、今考えるとこれはこれでバランスが取れているような気もします。部品を交換してしまったら、良くも悪くも、コンポーネントギターのような整った音になってしまうんじゃないでしょうか。
ネック
おそらくこの楽器の音を一番方向づけているのがネック。木材もシェイプも本家とは大きく異なります。
木材
レスポールといえばネックもボディも普通はマホガニーですがこのギターはメイプルネック。この年代の国産の楽器には結構多い仕様です。
メイプルネックのレスポールってどういう音するの?バキバキじゃない?と思う方が多そうですが、僕の印象では真逆です。マホガニーのようにエアー感のあるパリッとした音がしない分、きめ細かく、伸びが良い音が出るという印象です。
このギターを譲ってくれたおっちゃんは「本家とは違うけどシングルコイルみたいな音がする」と言っていましたが、今考えるとネックが大きな理由だと思います。今まで弾いてきたどのレスポールよりもクリーントーンが綺麗です。
なんというか音に濁りがない。レコーディングでも使いましたが、40年前のギターとは思えないほど綺麗な音が録れました。
ネックシェイプ
またこのギター、日本人が作ったからなのか、ネックが細いので弾きやすいです。Gibsonの台形ネックというよりはPRSのCをさらに細くした印象。手が小さい自分には実にありがたい。
その影響なのか、音も上品です。太いネックのギターのような弦が暴れる感じが少なく、結果として前述のクリーントーンの綺麗さに繋がっていると思います。
どういうギター?
GibsonのレスポールよりもPRSやテレギブの方が似ていると思います。その一方で、ハイが強めの音なのでJimmy Pageモデルのレスポールのように聞こえる瞬間もあります。
レスポールといえばハードロックに使うイメージが強いですが、ハードロックに必須の「アタックのカリカリ感」「音が暴れる鳴り方」はこの楽器にはあまりないので、そういった要素がむしろ邪魔になるモダンなブルースやフュージョンに向いていると思います。
個人的に、この楽器の特徴をよく捉えていると思った動画を2つほど紹介します。
まずクリーントーン
冒頭のLittle Wingがもうすでにクリーン綺麗ですよね。オールマホのレスポールではこの音は出ないと思います。
動画後半の歪みでは、アンプ(エフェクター?)側を歪ませていい感じにレスポールっぽい音にする工夫がなされている印象です。
次に歪み
他のレスポールにはない伸びやかなサスティンが印象的。
Suproのアンプを使っているので、少しJimmy Pageっぽさもありますね。彼の59年製レスポールは本人の好みでネックを薄く削ってあるので、結果的に似た音に聞こえるのかもしれません。
どんな人にオススメ?
以下の条件に当てはまる人にはオススメです。
- 音抜け、音の伸びが良くネックが安定しているので、安くて質のいいギターをお探しの方
- 古い楽器が好きな方
- 引き締まった音が好きな方
- Jimmy Pageっぽい音をお手軽に出したい方
国産なのでコスパは抜群に良いです。海外製の古いギターはなかなか庶民には手が出づらいので、良い木材を使った楽器を一本持っておく意味でもいい選択肢だと思います。
逆にあまりオススメできないのは以下のような方
Gibsonのレスポールの音が好きでそこに近づけたい、というアプローチには向かない楽器です。というかGibsonの音出すならGibsonの楽器買うのが一番早いと思います。
ただ、現行のGibson USAよりも木材の質が良く製造年も古いので、今のGibsonにはないヴィンテージっぽさもまた確実にあります。
余談
Super Realシリーズ
ちなみに、この記事で紹介したのは79年製ですが、翌年80年からはSuper Realシリーズが発足、ネックもマホガニーになりより本家のヴィンテージっぽい仕様になりました。
レスポールっぽい音が好きな方は、こっちの方が音が好みかもしれません。
ポット
GrecoのポッドはGibsonのものと規格が違うので、Greco専用のCTSを買う必要があります。
これを知らなかったがために、ポット交換を頼んだ友人がGibson用CTSの余剰在庫を抱える羽目になっていました。
ショップに頼めば問題ありませんが、ご自分で交換される場合は要注意です。
まとめ
音やブランドに対して強いこだわりがない方は、とりあえず買って損はない楽器だと思います。
典型的なレスポールサウンドではありませんが、むしろオールマホのレスポールよりクセがなく融通が効くので、本家以上に使いやすい印象です。
それでいてハカランダなど、今では到底使えないようなグレードの木材が使われているので、実は10万円以下で手に入れられる唯一のハイエンドギターかもしれません。
古い楽器なので状態は微妙なことも多いですが、フレットのすり合わせやリフレットをすれば余裕で使い倒せますし、FenderやGibsonオリジナルのように価値が下がる心配もあまりありません(最初からあまり高くないことが多いので)。
お店で売られているのを見かけたら、是非一度手に取ってみて欲しい楽器です。
以上、ジャパンヴィンテージはいいぞおじさんでした。